NEW!試用期間とは?分かりやすく解説! 

労働契約法
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監修者

ミーティア法律事務所 代表弁護士。日本労働弁護団所属。複数の中小企業の顧問弁護士として、人事・労務、企業法務等の案件を担当。

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 新しい会社に入社した際や、新入社員を迎える際に必ずといっていいほど設定されるのが「試用期間」です。

 「試用期間中はお試し期間だから、能力が低ければ簡単に解雇できる。」「試用期間中は本採用ではないから、労働基準法が適用されない。」といった誤った認識を持っている労働者や企業担当者は少なくありません。

 しかし、労働法上、試用期間中の労働者もすでに雇用契約が成立しており、法律によって手厚く保護されています。そのため、会社が安易に「本採用拒否(解雇)」を行ったり、不当に長い試用期間を設定したりすることは、裁判で無効と判断されるリスクが極めて高いのが現実です。

 本記事では、弁護士の視点から、試用期間の法的な性質、期間の長さや延長に関する限界、本採用拒否(留保解約権行使)が認められる判例上の要件、さらには実務上の注意点まで、最新の裁判例を交えて分かりやすく徹底解説します。

1. 試用期間とは?その法的性質(解約権留保付労働契約)

(1) 試用期間の定義と目的

 試用期間とは、使用者が労働者を本採用する前に、実際の業務を通じてその者の業務適性、能力、勤務態度、性格、健康状態などを観察・評価し、本採用とするか否かを判定するために設ける期間を指します。

 採用面接や履歴書等の書類選考だけでは、応募者の実際の能力や適性を完全に見極めることは困難です。そのため、一定の試用期間を設け、実際に働かせた上で最終的な雇用継続の判断を行うという実務慣行が広く定着しています。

(2) 最高裁が示す法的性質:「解約権留保付労働契約」

 「試用期間中は雇用契約が成立していない」あるいは「入社ではなく単なる予約状態に過ぎない」と勘案されがちですが、最高裁判所の判例法理によれば、試用期間の開始時点で既に労働契約(雇用契約)は成立していると解されています。

 この試用期間付労働契約の法的性質について判断したのが、三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日)です。

【最高裁判例】三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日)

  • 事案の概要:大学卒業後に試用期間付きで採用された労働者が、過去の学生運動歴等を履歴書に記載せず面接でも秘匿していたことを理由に、試用期間満了時に会社から本採用を拒否された事件。
  • 最高裁の判断:
    • 法的性質:試用期間が付された雇用契約は、就業規則の定めや採用の実情等に照らし、「解約権留保付雇用契約」(労働契約の成立と同時に、適性に欠ける場合に契約を解除できる権利を会社が留保している契約)であると判示しました。
    • 本採用拒否の法的性質:本採用の拒否は、留保していた解約権の行使であり、「雇入れ後の解雇」にあたります。したがって、通常の雇入れの拒否(不採用)と同視することはできません。
    • 解雇権行使の制限:留保解約権の行使は法律上可能であるものの、労働者は他企業への就職機会を放棄して入社していること等を考慮すると、留保解約権の行使は「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」とされました。
    • 具体的な判断基準:採用決定後の調査結果や試用中の勤務状態等により、「当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至り、それにより引き続き当該企業に雇用しておくことが適当でないと判断することが客観的に相当と認められる場合」に限って、本採用拒否(留保解約権の行使)が認められます。

 このように、試用期間中であっても労働契約は既に成立しているため、会社が「期待していたほど優秀ではなかった」「社風に合わない気がする」といった曖昧な理由で本採用を拒否することは、解雇権の濫用(労働契約法16条)として無効となります。

(3) 期間の定めがある契約(有期雇用)における適性評価期間

 新規採用に際して契約期間(例:1年間)が設けられている場合であっても、その期間を設けた趣旨・目的が「労働者の適性を評価・判断するため」のものであるときは、原則として契約の存続期間ではなく「試用期間」と解されます。

【最高裁判例】神戸弘陵学園事件(最判平成2年6月5日)

  • 判旨:使用者が労働者を新規採用するに当たり、雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、期間満了により契約が当然終了する旨の明確な合意等がない限り、その期間は契約存続期間ではなく「試用期間」と解するのが相当であるとされました。そして、試用期間中の労働者が他の労働者と同じ職場で同じ職務に従事している等の場合には、特段の事情がない限り「解約権留保付雇用契約」にあたると判断されています。

2. 試用期間の「長さ(期間)」に関する法的ルール

 試用期間の長さについて、労働基準法等に直接の制限規定(「最長〇ヶ月まで」等)が明記されているわけではありません。一般的には3ヶ月〜6ヶ月程度に設定されるケースが多く見られます。

 しかし、会社が任意にどれだけでも長い試用期間を設定できるわけではありません。

(1) 長すぎる試用期間は公序良俗違反(民法90条)により無効

 試用期間中の労働者は、留保解約権が行使される可能性を常にはらんでおり、本採用後の労働者に比べて不安定な立場に置かれています。そのため、適性や勤務態度を評価するために必要な合理的範囲を超えて不必要に長期の試用期間を定めることは、公序良俗(民法90条)に反し、無効となります。

【裁判例】名古屋地判昭和59年3月23日

  • 事案と判断:見習社員としての試用期間(最長で1年〜1年3ヶ月)を経た労働者に対し、試用社員としてさらに6ヶ月〜1年の試用期間を設けて選考を行う制度について、裁判所は「会社が業務に対する適性を判断することは最初の見習期間中で十分可能であり、さらに長期の試用期間を設ける合理的な必要性はない」として、合理的範囲を超える試用期間の定めを公序良俗に反し無効と判断しました。

(2) 有期労働契約における試用期間の長さの限界

 有期労働契約(契約社員等)において試用期間を設ける場合、雇用期間全体とのバランスが厳しく問われます。

【裁判例】東京地判平成25年1月31日

  • 事案の概要:雇用期間1年の有期労働契約で採用された証券アナリストに対し、6ヶ月間の試用期間が設定され、試用期間中に留保解約権が行使(解雇)された事例。
  • 裁判所の判断:
    1. 期間の合理性:1年という雇用期間に対し「6ヶ月間」という試用期間は長すぎると指摘。即戦力としてアナリストレポートを作成・提出させて能力を判定するには「長くとも3ヶ月間もあれば十分」とし、3ヶ月を超える部分は必要かつ合理的な期間を超えており公序良俗等に反して無効(試用期間は3ヶ月の限度で有効)と判定しました。
    2. 有期雇用における留保解約権行使の要件:有期労働契約における留保解約権の行使には、労働契約法16条の解雇権濫用法理に加え、労働契約法17条1項が定める「雇用期間の満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由」に準ずる厳格な要件が必要であると示しました(※本件では著しい能力不足と信頼関係の喪失が認められ、解雇自体は有効とされています)。

3. 試用期間の「延長」は認められるのか?

 実務上、試用期間満了時に「本採用とするか判断に迷うため、あと3ヶ月試用期間を延長したい」という場面が生じることがあります。試用期間の延長は原則として認められるのでしょうか。

(1) 延長には明確な根拠が必要

 試用期間の延長は、労働者の不安定な立場をさらに継続させることを意味するため、自由に決定することはできません。延長を行うためには、就業規則への明記や、労働者本人の個別同意といった明確な法的根拠が必要です。

 また、就業規則に規定がある場合でも、無制限に延長できるわけではなく、「延長する合理的な理由(やむを得ない事情)」と「必要最小限度の期間設定」が求められます。

【裁判例】東京地判昭和60年11月20日

  • 判旨:試用期間満了時に一応職務不適格と判断された者について、直ちに解雇せず配置転換等でさらに適性を見出すために試用期間を延長すること自体は目的として是認し得るものの、満了後になされた2回目の延長において「延長期間の定め」を置かず無期限に延長した措置については不相当であり無効であると判断されました。

(2) 当初の試用期間中に調査・指導を尽くしていない場合の延長無効

 会社が試用期間中に適切な指導や検証を怠っていた場合、期間延長の合理性が否定されることがあります。

【裁判例】東京地判令和2年9月28日

  • 事案の概要:新卒扱いで採用された従業員が、マナー研修や現場研修で不適切な言動(指示拒否や工具の投げての発憤等)を行ったことなどを理由に、会社が試用期間を延長した事例。
  • 裁判所の判断:
    • 試用期間の延長には、職務能力や適性について調査を尽くした上で「労働者の利益のためさらに見極める必要がある」といった「やむを得ない事情」が必要であると規定。
    • 会社は就労開始直後から対象者の態度不良を把握していたにもかかわらず、面談を実施して問題点を具体的に指摘したり、改善がなければ本採用拒否もあり得ると警告したりする等の適切な指導・調査を怠っていたと認定。
    • 当初の試用期間中に調査・指導を尽くしていなかった以上、試用期間を延長する「やむを得ない事情」があったとは認められず、延長措置は無効であると結論付けました。

4. 雇用継続中の「試用期間の中途設定」の可否

 すでに勤務している従業員に対し、勤務途中で新たに「試用期間」を設けることは可能でしょうか。

 結論から言うと、継続雇用中の試用期間の中途設定は原則として違法・無効です。

【裁判例】盛岡地判平成元年8月16日

  • 判旨:雇用開始時に試用期間を設けることは許されるが、「雇用が継続中に試用期間を設けることは、試用という文言それ自体の趣旨から、原則として許されない」と示されました。これは労働者の同意があっても同様に無効となります。
  • 例外ケース:タクシー運転手として雇用されていた者が一般事務員に職種変更されるなど、「新たに雇用したと同視できるような例外的な場合」に限って、途中で試用期間を設定することが認められます。

5. 本採用拒否(留保解約権行使)の有効性が争われた裁判例

 どのようなケースであれば「本採用拒否」が裁判で有効と認められるのでしょうか。

 前述のとおり、単なる「期待外れ」「能力がやや低い」「要領が悪い」程度では本採用拒否は認められません。客観的に重大な不適格事由が存在し、会社側が適切な指導・是正の機会を与えても改善しなかったような場合に限られます。

 ここでは、本採用拒否(留保解約権行使)の有効性が争われた代表的な裁判例を紹介します。

(1) 本採用拒否が有効と認められた事例

① 高額待遇の中途採用幹部における経歴詐称・協調性欠如

【裁判例】東京地判平成31年1月11日

  • 事案の概要:高額な賃金待遇のもと、即戦力の事業部部長(管理職)として中途採用された労働者に対し、会社が本採用を拒否した事例。
  • 不適格事実:
    1. 入職後わずか1ヶ月の間に重要会議にたびたび欠席した。
    2. 権限がないのに施設長の降格や不適格性を衆目の前で示唆し、高圧的・威圧的な言動を繰り返して職場内・外部からのクレームや離職原因を引き起こした。
    3. 市の事業に関するリベート取得や会社による不正アクセスなど、事実に反する根拠のない不正を外部に流布・記者会見で摘示した。
    4. 履歴書の経歴(過去の事業での関与実績やコンサルタント会社での稼働期間)に著しく事実に反する不適切な記載(経歴詐称)があった。
  • 裁判所の判断:高いマネジメント能力を期待されて中途採用された者として、他の職員の業務遂行に悪影響を及ぼす協調性欠如の言動や、著しい経歴の虚偽記載が存在することから、本採用拒否(解約権留保の行使)は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるとして有効と認められました。

② 介護施設職員の粗暴言動・指導無視(有期雇用での試用期間中解雇)

【裁判例】東京地判令和2年3月27日

  • 事案の概要:介護施設に採用された職員が、入居者への配慮に欠ける言動や同僚職員への身勝手・粗暴・威圧的な言動を繰り返し、注意・指導を受けても一切改善しなかったため、試用期間中に解雇された事例。
  • 裁判所の判断:入居者と直接接する介護業務や他の業務を依頼することが困難な状況に至っており、繰り返し指導しても改善しなかったこと、本件解雇が試用期間中のものであったこと等を考慮し、有期契約中の解雇であっても「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項)が存在し有効と判断されました。

(2) 本採用拒否が無効とされやすい傾向・ポイント

一方で、以下のようなケースでは本採用拒否が「無効」と判断される可能性が極めて高くなります。

  1. 新卒採用・未経験者に対する過度の能力要求:体系的な教育・指導を行わずに「即戦力にならない」として拒否する場合。
  2. 抽象的な「協調性不足」「意欲不足」:具体的な業務上の支障や具体的エピソード(頻繁な遅刻、指示違反等)が客観的に立証されていない場合。
  3. 会社側の指導・警告不足:勤務態度や成果に問題があったにもかかわらず、試用期間中に面談や文書等で改善を促さず、いきなり満了時に本採用拒否を通告した場合。

6. 試用期間中の労働条件と法的注意点

 「試用期間中だから」といって、労働法の基本ルールが除外されることはありません。実務上留意すべき主なポイントは以下の通りです。

(1) 労働法の全面適用(賃金・残業代・社会保険)

  • 賃金・最低賃金:試用期間中であっても、都道府県ごとに定められた最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません(※都道府県労働局長の許可を得た一部の特例を除く)。
  • 割増賃金(残業代):試用期間中であっても、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて労働させた場合は、通常通り割増賃金(残業代)の支払義務が発生します。
  • 社会保険・雇用保険:試用期間中であっても、入社初日から健康保険・厚生年金・雇用保険の加入条件を満たしていれば、即日加入手続きを行う義務があります(「本採用になってから加入させる」というのは違法です)。

(2) 試用期間中の解雇と解雇予告(労働基準法20条・21条)

 試用期間中の労働者を解雇(本採用拒否を含む)する場合、解雇予告ルールとの関係に注意が必要です。

  • 試用期間開始から「14日以内」の解雇:
    • 労働基準法21条4号により、解雇予告(30日前)や解雇予告手当の支払いは不要で、即時解雇が可能です。
    • ※ただし、14日以内であっても前述の「留保解約権行使の合理性・相当性(解雇権濫用法理)」の適用はあるため、客観的理由のない恣意的な解雇が許されるわけではありません。
  • 試用期間開始から「14日を超えた」後の解雇:
    • 通常の労働者と同様に、原則として「30日前の解雇予告」または「30日分以上の解雇予告手当の支払い」が必要となります(労働基準法20条)。

7. まとめ:トラブルを防ぐためのチェックポイント

 試用期間をめぐる法的トラブルを未然に防ぎ、適切に運用するために、企業側・労働者側が確認すべきチェックポイントをまとめます。

企業(使用者)側のチェックポイント

  1. 就業規則および労働条件通知書の整備
    • 就業規則に試用期間の定義、長さ、本採用拒否事由、延長の可能性・要件が明確に定められているか。
    • 入社時に「試用期間があること」および「試用期間中の労働条件」を労働者に明らかにしているか。
  2. 試用期間中の適切な教育・指導と記録
    • 対象者の問題行動や能力不足に対し、具体的な指導・面談を行い、改善の機会(注意・警告)を与えているか。
    • 指導内容や改善状況、面談記録を客観的な文書・データとして残しているか(客観的合理性の立証資料)。
  3. 安易な期間延長・本採用拒否の回避
    • 「なんとなく不安だから」という理由で無計画に試用期間を延長していないか。
    • 本採用拒否を行う場合、三菱樹脂事件の法理(当初知ることができず知ることが期待できない重大な事実の存在)を満たしているかを弁護士等に事前相談・確認しているか。

労働者側のチェックポイント

  1. 労働条件通知書・雇用契約書の確認
    • 入社時に提示された書面に試用期間の有無、期間の長さ、本採用後の条件との違いが明記されているか確認する。
  2. 不当な本採用拒否・条件切下げへの対処
    • 「会社の雰囲気に合わない」「期待より能力が低い」といった理由だけで突然本採用拒否を通告された場合、解雇権の濫用(無効)である可能性が高い。
    • 試用期間中であることを理由に、社会保険に加入させてもらえない、残業代が支払われないといった対応を受けた場合は、違法である可能性を疑い、専門家(弁護士や労働基準監督署)に相談する。
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